麻黄湯ベースに薏苡仁が加わった派生処方
キーワードは「風湿」と「薏苡仁」
薏苡仁はイボだけの生薬ではない

麻黄湯からの派生処方に「風湿(急な水分代謝の異常)」に対する方剤がある。今回の主役(主薬)は「薏苡仁」。急性期の軽い症状には麻杏薏甘湯、慢性期の水がたまった症状には薏苡仁湯を。

【基本処方:麻黄湯(詳細は麻黄湯とその派生処方 その1参照)】
麻黄湯といえば、有名な発汗剤だ。つまり表証用の方剤である。そして、咳にもよく奏効する。

 No.27(麻黄湯): 麻黄、桂枝、杏仁、甘草

適応:外感風寒表実証

インフルエンザやカゼなど(外感)で、急に悪寒(風寒)や発熱、頭痛、咳、鼻汁など(表証)が生じ、無汗(実証)の症状に適している。

麻黄湯は強力な発汗剤であるので、汗が出たら中止し、長期間使わないようにしたい。また、汗の出やすい虚弱体質者への使用は避けるべきである。

【麻黄湯の派生処方】

 No.78(麻杏薏甘湯): 麻黄、杏仁、薏苡仁、甘草

適応:風湿表証

麻黄湯の桂枝の代りに薏苡仁が入ると麻杏薏甘湯となる(各生薬名が1文字ずつで覚えやすい)。

主薬の薏苡仁はイボに効く生薬として有名だが、風湿(急な水分代謝の異常)を除くことができる生薬である。

ここで水の代謝について。漢方では水の代謝には、肺、脾、腎が関与していると考えられている。そして脾(消化器系)の水分代謝の異常(湿)は痛みにつながる。

薏苡仁はこの湿脾を治療する要薬である。

さらに、「麻黄+薏苡仁」になると、「麻黄+桂枝」とも「麻黄+石膏」とも、違う薬効に方向転換する。

配合法則:「麻黄+薏苡仁」 → 汗とは関係なく、鎮痛・利尿効果をあらわす

そして、「麻黄+杏仁」は鎮咳・平喘作用のある組み合わせだが、肺気の流れをよくし、表面の浮腫にも効果がある。最後に甘草は、筋肉のけいれんをやわらげ(芍薬が入っていないので強くはない)、脾の水分代謝を助けている。

麻杏薏甘湯が合う証は臨床上少ない。梅雨の時期やカゼを引いたときに(風湿の邪気)、全身にむくみや痛みがあるような症例に適している。急性期の軽い症状と考えてよい。

  No.52(薏苡仁湯): 薏苡仁、蒼朮、当帰、芍薬、麻黄、桂枝、甘草

適応:風湿侵入、血脈不通

麻黄湯から杏仁を除き、薏苡仁、蒼朮、当帰、芍薬を加えると薏苡仁湯になる。薏苡仁と蒼朮はともに湿を除去する生薬で主薬となる。

また、この方剤も「麻黄+薏苡仁」の組み合わせで、鎮痛・利尿にはたらく(「麻黄+桂枝」も残っているので汗かきには不適)。

さらに当帰で血液の循環を良くし、「芍薬+甘草」の配合法則で痛みや筋肉のけいれんを改善する。

風湿がひどくなると水がたまり、関節に冷え、腫れ、痛みがあらわれる。そのような症状の慢性関節リウマチや変形性膝関節症などに用いる(リウマチは漢方で風湿とよばれる)。

【投薬時の注意点】

No. 78(麻杏薏甘湯): 麻黄が入っているので汗かきには不向きである。

No.52(薏苡仁湯): 「麻黄+桂枝」なので汗かきには使わない。また、関節の発赤・熱感が見られる場合は投与しない(越婢加朮湯が適)。