インフルエンザなら麻黄湯!?
麻黄は水をさばく生薬、どうさばくのか?
寒熱は漢方ならではの重要な概念だ

インフルエンザシーズンに品薄筆頭の漢方といえば麻黄湯だ。タミフルなどと併用すると罹患期間が短くなるそうだ。でも、漢方の概念からして病名から方剤が決まるはずがない。

【基本処方:麻黄湯】
麻黄湯といえば、有名な発汗剤だ。つまり表証用の方剤である。そして、咳にもよく奏効する。

 No.27(麻黄湯): 麻黄、桂枝、杏仁、甘草

適応:外感風寒表実証

麻黄湯には2つの配合法則が含まれている。まず「麻黄+桂枝」で発汗を促す。麻黄は麻黄湯の主薬であり、桂枝と組み合わせることで、それぞれ単独で用いたときよりも発汗作用は強くなる。次に「麻黄+杏仁」で鎮咳・平喘作用をあらわす。最後に甘草。これは麻黄+桂枝の発汗過多による消耗を防止するため、つまり緩和の目的で配合されている。

インフルエンザやカゼなど(外感)で、急に悪寒(風寒)や発熱、頭痛、咳、鼻汁など(表証)が生じ、無汗(実証)の状態に適している。

もっとも大事な点は「汗」である。自汗なら麻黄湯ではなく桂枝湯などが適応となる。ここを理解できなければ、漢方でのカゼ疾患の治療は無理と考えていい。

そして、麻黄湯は強力な発汗剤なので、汗が出たら中止し、長期間使わないようにしたい。また、汗の出やすい虚弱体質者への使用は避けるべきである。

【麻黄湯の派生処方】

 No.55(麻杏甘石湯): 麻黄、石膏、杏仁、甘草

適応:外感風熱、肺熱咳喘

麻黄湯の桂枝の代りに石膏が入ると麻杏甘石湯となる(各生薬名が1文字ずつで覚えやすい)。麻黄4g対して石膏は10gも入っており、主薬となる。石膏は大寒の生薬で、これがあるとその方剤も全体として寒性を示す。さらに「麻黄+石膏」の配合法則で、麻黄の発汗作用は方向転換し、むしろ止汗的に作用する。

麻黄は「水をさばく」生薬である。組む相手によって、さばく方向が変わる。

 麻黄+桂枝 → 発汗、つまり表に水をさばく
麻黄+石膏 → 止汗、つまり裏に水をさばく

そのほかの生薬の配合目的は麻黄湯と同じ、つまり「麻黄+杏仁」で鎮咳・平喘に、甘草は諸薬の調和のために配合されている。

インフルエンザやカゼなど(外感)で、急な発熱やのどの痛み(風熱)、急性気管支炎、発熱すると喘息発作が出る場合など(肺熱咳喘)に用いられる。

「急性」かつ「熱証」がキーワードだ。具体的には、寒気はなく、汗は有汗(あるいは無汗)、口渇、黄色い痰などである。

熱証には抗生剤の併用がおすすめ。また、肺熱がひどくなるようなら、清肺湯などを検討したい。

この麻杏甘石湯からの派生処方に越婢加朮湯がある。

 No.28(越婢加朮湯): 麻黄、石膏、白朮、甘草、生姜、大棗

適応:風水

麻杏甘石湯から杏仁を抜き、白朮と生姜、大棗を加えると越婢加朮湯となる。

「麻黄+石膏」で裏に水をさばく(利水作用)。この方剤も石膏が入っているので、寒性を示す。また石膏は裏熱や口渇に効果がある。

白朮は脾(消化器系)を強くし、甘草とともに体内に水湿(水分の代謝異常)が生じないように働く。水湿は痛みにつながるから、それを抑えることで鎮痛作用を示す。

「生姜+大棗」の配合法則は、副作用防止、作用緩和の目的で配合されている。

適応の風水は「急に腫れる」といったイメージだ。臨床で用いる場合には、関節の発赤・熱感・疼痛・腫脹がポイントとなる。

【投薬時の注意点】

 麻黄を含む方剤に共通する注意点: 麻黄には交感神経や中枢神経の刺激作用があるので、興奮、血圧上昇、動悸、頻脈、発汗過多、排尿障害を引きおこすことがある。とくに、証が異なる場合(不適応)や麻黄の量が多い場合には要注意。

No.27(麻黄湯):【温服】強力な発汗剤なので、汗の出やすい虚弱体質者にはさける。また、発汗が見られ解熱した場合には中止する。単独での長期服用も避ける。

No.55(麻杏甘石湯):【冷服】風寒による(急に寒くなると出る)喘息には用いてはいけない。

No.28(越婢加朮湯):【冷服】手足の冷えや寒がりの方には単独では用いない。また服薬中に手足の冷えなどを訴える場合には中止する。

* 寒熱は西洋薬にはない概念。ここを間違えると副作用が出やすいので注意したい。