漢方薬を系統立てて学ぶ方法
基本8処方とその派生処方
その目次とイントロ
【目次】
1、基本処方① : 小柴胡湯
小柴胡湯(9)、大柴胡湯(8)、柴胡桂枝湯(10)
柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、柴胡桂枝乾姜湯(11)
柴朴湯(96)、柴苓湯(114)
2、基本処方② : 二陳湯
二陳湯(81)、半夏白朮天麻湯(37)、竹笳温胆湯(91)
六君子湯(43)、抑肝散加陳皮半夏(83)
苓甘姜味辛夏仁湯(119)、清肺湯(90)
釣藤散(47)、二朮湯(88)
3、基本処方③ : 四君子湯
四君子湯(75)、六君子湯(43)、補中益気湯(41)
人参湯(32)、苓桂朮甘湯(39)
帰脾湯(65)、加味帰脾湯(137)
補中益気湯(41)、清暑益気湯(136)
4、基本処方④ : 四物湯
四物湯(71)、当帰芍薬散(23)、芎帰膠艾湯(77)
七物降下湯(46)、疎経活血湯(53)
当帰飲子(86)、温清飲(57)
温清飲(57)、荊芥連翹湯(50)、柴胡清肝湯(80)
5、番外編 : 八珍湯
5-1)「四君子湯+四物湯」(八珍湯)とその派生処方 その1
十全大補湯(48)、人参養栄湯(108)
5-2)「四君子湯+四物湯」(八珍湯)とその派生処方 その2
大防風湯(97)
抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)
6、基本処方⑤ : 麻黄湯
麻黄湯(27)、麻杏甘石湯(55)、越婢加朮湯(28)
葛根湯(1)、葛根湯加川芎辛夷(2)、小青竜湯(19)
麻杏薏甘湯(78)、薏苡仁湯(52)
7、基本処方⑥ : 桂枝湯
桂枝湯(45)、葛根湯(1)、柴胡桂枝湯(10)
桂枝加朮附湯(18)、桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
桂枝加芍薬湯(60)、小建中湯(99)
8、基本処方⑦ : 八味地黄丸
八味地黄丸(7)、六味丸(87)
牛車腎気丸(107)
9、基本処方⑧ : 四逆湯
四逆湯、附子理中湯(401)、人参湯(32)
桂枝加朮附湯(18)、真武湯(30)、大建中湯(100)
人参湯(32)、桂枝人参湯(82)
10、参考① : 参考図書
10-1)配合法則
(桑木崇秀『健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック』)
10-2)漢方は非科学ではない
(渡辺賢治『日本人が知らない漢方の力』)
11、参考② : 特徴のある生薬
【証とは「人間の分類」である】
漢方薬の選択や理解には証の概念が欠かせない。つまり病名処方ではないということだ。
同じ病名であっても証が違えば薬も違う。逆に証が同じなら、違う西洋病名でも同じ薬が使われることになる。これを「同病異治」「異病同治」と呼ぶのだが、漢方はあくまでも証に基づいて使う。
(渡辺賢治『日本人が知らない漢方の力』祥伝社新書 P. 28)
証はさまざまな症状を統合したもので、その症状の現われ方や、平常時の体質や体格も含めて決定する。いわば「人間の分類」である。 (中略) 漢方では診察して証が決まれば、治療法(薬方指示)も決まることになる。こうした診断方法は「方証相対」と呼ばれ、「証」と「治療方法」とが一体となっているのである。
(同書 P. 68-9)
それでは、各方剤ごとに証を覚えていかないとダメなのか? 答えはもちろんYESだ。分類した人間、つまりその証に対して効くように生薬を組み合わせたものが方剤だからだ。
しかし方剤の1つひとつが脈絡もなく、つながっていないわけではない。
【基本8処方をマスターしよう】
基本処方というものが8処方ある。その基本8処方とその派生処方を押さえておけば、医療用エキス製剤の70%はカバーできる、とわたしの漢方の師、趙基恩先生はおっしゃっている。
もうひとつ、先生の言葉を受け売りで紹介するならば、「漢方は方剤名だけではなく、中身もわかっていないと、どうして効く? どうして効かない? と迷うことになる」そうだ。
なるほど。実際、漢方の方剤を西洋薬のように薬理作用で説明することは難しい。迷っている人は漢方に興味のある方で、迷っていない人は漢方を理解しているかもしくは思考停止のどちらかだと推測する。
さて、基本8処方とその派生処方をマスターすると医療用エキス製剤の70%の方剤をイメージできる。つまり、より適切な薬剤の選択ができるようになるわけだ。だが現状、われわれ保険薬局の薬剤師は、漢方を選択するよりも、それを処方せんの指示に従って投薬するケースの方がはるかに多い。
しかしそれでも、基本8処方は役に立つ。まず、患者さんにわかりやすい説明ができる。つぎに証の合わない患者、つまり副作用の出やすい患者を見分けることができる。そして、投薬時に必要な注意事項。そういったものを系統的に学ぶことができるからだ。