小柴胡湯の派生処方 No.11、12 
「肝」の失調に用いる方剤
柴胡剤に共通の注意事項とは?

柴胡+黄芩の組み合わせは柴胡剤と呼ばれる。
そして、柴胡は少陽(半表半裏)の専用薬だけでなく、他の生薬を引き連れて「肝」にいく案内人でもある。

【基本処方:小柴胡湯】 (詳細は「小柴胡湯とその派生処方 その1」参照)

柴胡剤の基本処方。もちろん主薬は柴胡。病期分類では少陽病、表裏分類では半表半裏。寒熱往来、胸脇苦満、食欲不振、全身倦怠感などがある場合に用いられる方剤だ。

No.9 (小柴胡湯)  :柴胡、黄芩、半夏、生姜、大棗、人参、甘草

【小柴胡湯の派生処方】

No.12(柴胡加竜骨牡蛎湯):柴胡、黄芩、半夏、生姜、大棗、人参、桂枝、茯苓、竜骨、牡蛎

適応:心肝火旺(しんかんかおう)・脾気虚・湿痰

小柴胡湯から甘草の除いて、竜骨<鎮静・動悸・不眠>、牡蛎<鎮静>、茯苓<鎮静・めまい・動悸>、そして桂枝<のぼせ>を加えた方剤で、半表半裏症に「肝」の失調を伴うものに適している。

 * <  >は薬効を表す。

 * 配合法則 竜骨+牡蛎 : 裏虚証で、神経症状のある場合に、鎮静の目的で用いられる

    (*はともに健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック参照)

 「肝」に異常をきたすと、イライラ、怒りっぽい、驚きやすい、精神不安などの兆候が表れる。また肝は「心」に影響を与えるので、不眠や動悸などもおこる。

No.12は、イライラ・動悸・驚きやすい・精神不安・不眠といった症状で胃腸が弱く、疲れやすい方に、自律神経の調整や鎮静を目的に使われることが多い。

No.11(柴胡桂枝乾姜湯):柴胡、黄芩、甘草、桂枝、乾姜、牡蛎、瓜呂根

適応:肝鬱化火(かんうつかか)・胃寒

柴胡+黄芩なので柴胡剤ではあるが、小柴胡湯からはかなり崩れている(生姜も乾姜になっている)。桂枝・乾姜・牡蛎・甘草と虚証用の薬が多く入っており、より虚証向きの方剤となっている。また、瓜呂根は潤性薬(体内の水分を保留し、身体を潤す薬)で、牡蛎には鎮静・止汗作用がある。

この処方、じつは半表半裏証に発汗や瀉下を施し、いわゆる誤治によって生じた病態に対する処方らしい。つまり発汗過多による脱水や瀉下による腹部の冷えや痛みに効果がある。

もう1つ、もともと「胃寒(冷たいものがダメ)」な人で「肝の失調」が見られる場合に適応する。柴胡・黄芩の寒性を桂枝・乾姜の温性によって弱めている(だから生姜が乾姜になっている)ので、小柴胡湯などで胃が痛くなる症例にも使える方剤になっている。

No.11を用いるポイントは、胸脇苦満やイライラ、発汗過多などの症状に、腹部の冷えや痛みを伴う場合となる。

【投薬時の注意点】

No.12(柴胡加竜骨牡蛎湯):手足のほてりやのぼせといった陰虚の症状があるときには使わない。その症状がひどくなる。また、血圧が低い人には用いない。

* No.12は陽症(実、表、熱の要素の強いもの)に用いる。同じような症状でも陰症(虚、裏、寒の要素の強いもの)には、No.26(桂枝加竜骨牡蛎湯)を用いる。

No.11(柴胡桂枝乾姜湯):手足のほてりやのぼせといった陰虚の症状があるときには使わない。その症状がひどくなる。

陰虚証には用いない。これは柴胡剤の共通の注意点だ。簡単に確認ができるし、証が合っていないのなら、その症状がひどくなるので、患者でも判別が可能だ。ぜひアナウンスしていきたい。