寒湿とは、「冷え」+「水分の代謝異常」
冷えると痛む むくみや下痢
温裏に用いる四逆湯の派生処方

【基本処方:四逆湯(詳細は四逆湯とその派生処方 その1 参照)】

 四逆湯 : 附子、乾姜、甘草

 適応 : 少陰病、亡陽虚脱

腎の陽を温め補う附子と脾胃を温める乾姜。ともに熱性の生薬である。そして甘草は附子の毒性を弱め、附子・乾姜の作用を緩和するために配合されている。

陽虚、寒証に用いられ、お腹を温める方剤の基本処方である。

【四逆湯の派生処方】

 No.18(桂枝加朮附湯) : 桂枝、芍薬、蒼朮、附子、甘草、生姜、大棗

適応 : 寒湿脾証

桂枝湯に蒼朮、附子をくわえると桂枝加朮附湯になる。そしてその中には四逆湯が含まれている。生姜をほしたもののが乾姜だからだ。

上半身が冷えるとひどくなるようなしびれや痛みを治療する方剤

詳しくは→桂枝湯とその派生処方 その2を参照。

 No.30(真武湯) : 附子、茯苓、白朮、芍薬、生姜

適応:温腎散寒、健脾利水

腎の陽を温め補う附子が主薬であり、水湿代謝も強める。これに茯苓、白朮といった水湿を除き、脾のはたらきを助ける生薬が加わる。さらに痛みに芍薬、表の水湿に生姜を加えると、真武湯になる。

真武湯は陽虚によるむくみを治療する代表処方だ。利水といえば、五苓散が有名だが、五苓散は原因を治すわけではないため、飲まないとすぐに元に戻ってしまう。たいして真武湯は、からだのバランスから、つまり腎陽を回復させる。

頻尿や残尿感、下痢、むくみ、四肢の冷感や痛みを伴う寒がりの方に適している。

 No.100(大建中湯) : 山椒、乾姜、人参、膠飴

適応:温中補虚、降逆止痛

補虚散寒の力が小建中湯よりもはるかに強いので「大建中湯」と呼ばれる。その理由はどの基本処方から派生しているかを考えれば理解できる。つまり、小建中湯が桂枝湯からの派生処方なのにたいして、大建中湯は四逆湯から派生しているからだ。

ところで、この構成生薬を眺めても、附子はないし、四逆湯の派生処方には見えない。じつは、もとは人参湯(No.32:人参、乾姜、甘草、白朮)だ。これから甘草、白朮を除き、温脾胃・散寒除湿の山椒を加え(主薬)、膠飴を加えると大建中湯になる。

四逆湯→附子理中湯→人参湯(理中湯)→大建中湯と変化している。つまり、大建中湯は立派な四逆湯の派生処方なわけだ。

陽虚・寒証に伴うきつい腹痛に使われる大建中湯は、現在、外科のオペ後によく使われている。オペ後の胃や腸が回復していない状態では、それらは冷えや腫れを伴っている。すると循環がわるくなり、陽虚となる。だから四逆湯からの派生処方である大建中湯がよく効くわけだ。

【投薬時の注意点】

No.18(桂枝加朮附湯):関節の発赤や腫脹、熱感には用いない(こういうときは越婢加朮湯を用いる)

No.30(真武湯):実証の(冷えがない)浮腫には用いない。手足のほてりやのぼせ、発熱時はさける。

No.100(大建中湯):手足のほてりやのぼせ、発熱時はさける(オペ後の感染症による発熱時もさける)。

*これらはすべて温裏の方剤であり、陰虚内熱と発熱時にはさける必要がある。