主薬が変わると効能が変わる
人参湯の主薬は乾姜
苓桂朮甘湯の主薬は茯

四君子湯の派生処方である人参湯と苓桂朮甘湯。2剤とも主薬が人参ではない。主薬が変わると目的や効能がガラッと変わる。

【基本処方:四君子湯(詳細は四君子湯とその派生処方 その1参照)】

四君子湯は補気剤の基本処方。胃腸を整えて気を補う、補気健脾の効果がある。

 No.75(四君子湯) : 人参、茯苓、白朮、甘草、生姜、大棗

適応:脾気虚

主薬はもちろん人参。これは補気剤にはすべて入っている。白朮が脾を強くし、茯苓が脾の水をさばき、甘草が諸薬を調和する。これら4つの生薬が君子のようにすばらしいから「四君子湯」といわれる。ちなみに、「生姜+大棗」は副作用防止と作用緩和のためで、本処方を含め、多くの方剤に含まれている。

【四君子湯の派生処方】

 No.32(人参湯) : 乾姜、人参、白朮、甘草

適応:脾胃虚寒

四君子湯の茯苓を乾姜にしたものが人参湯だ。その主薬は乾姜である。乾姜は脾胃を温めて、陽気を強め、裏寒を除く。人参湯は消化器の異常を治す要薬であり、理中湯とも呼ばれる(「中」はお腹つまり消化器、「理」はおさめるの意)。それにしても、人参が主薬ではないのに人参湯とは…。

 <参考> 「人参+乾姜」の配合法則 : 裏虚証用に広く用いられる

健保適用エキス剤による漢方診療ハンドブック P.54)

食欲不振、胃痛、膨満感、下痢などの症状で、四肢が冷える、温かいものを好む者に適している。

つまり、「虚寒」があるかどうかがポイントだ。「冷たいものを食べると胃が弱る」もしくは「寒くなると食欲がなくなる」といったタイプには、六君子湯ではなく人参湯が適している。

 No.39(苓桂朮甘湯) : 枝、白

適応:痰飲

四君子湯の人参を桂枝にしたものが苓桂朮甘湯だ。構成生薬は方剤名の中にその4つがふくまれており、覚えやすい。その主薬は茯苓であり、脾の水をさばく。また茯苓は、白朮とともに水の偏在を調整する。桂枝はのぼせや頭痛に、甘草は調和に配合されている。

水の偏在でおこる症状にめまいや立ちくらみがある。苓桂朮甘湯はめまいや立ちくらみの特効薬ともいわれており、胃腸虚弱で低血圧の方に適している。

【投薬時の注意点】

No.32(人参湯):手足のほてりやのぼせなど陰虚の症状のある者にはさける。また、発熱時は用いない。

No.39(苓桂朮甘湯):高血圧からくるめまいには適さない。