八味地黄丸と牛車地黄丸はどう違う?
違いは車前子と牛膝
とくに牛膝の特徴をおさえておきたい

腎虚において特筆すべき症状といえば、「ひざがガクガクする」ことだ。これがあれば間違いない。そこで登場するのがこの2剤。西洋医学にはリハビリしかない。

【基本処方:八味地黄丸(詳細は八味地黄丸とその派生処方 その1参照】
「腎」は「精力」と考える。ゆえに生理的な腎虚とは、いわゆる老化現象のことだ。具体的には夜間尿、小便不利、腰や下肢がだるくて力が入らない、老年性喘息、白内障、認知症などである。また病理的な腎虚もある。
これらの状態を補うのが補腎剤だ。その中でも八味地黄丸は特に有名だ。

 No.7(八味地黄丸):地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、牡丹皮、茯苓、桂枝、附子

適応:腎陽虚

地黄(主薬)、山薬、山茱萸はいずれも補腎薬である(「三補」)。いっぽう、沢瀉、牡丹皮、茯苓は「三瀉」といわれ、補腎薬をサポートしている。ここまでで全体の性質は寒性・補性・潤性となっている。これに桂枝、附子を加えることで、全体の性質が寒性から熱性となる。

腰や下肢の脱力感にくわえ、四肢の冷えや寒がり、夜間頻尿、インポテンツなどを伴うような腎陽虚の症状に用いる。

【八味地黄丸の派生処方】

 No.107(牛車腎気丸):地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、牡丹皮、茯苓、桂枝、附子、車前子、牛膝

適応:腎陽虚、利水消腫

八味地黄丸(別名:腎気丸)に牛膝(牛)と車前子(車)を加えると牛車腎気丸になる。車前子には利水作用があり、むくみや尿量減少を改善する。また牛膝は、牡丹皮と同じ駆瘀血薬(血液循環障害を除く)であり、その作用を強化する。

さらに牛膝には「下肢に他の生薬をつれていく」という案内人としてのはたらきがある。

よって牛車地黄丸は、腰や下肢の脱力感、四肢の冷え、下肢のしびれや痛み、むくみ、排尿困難に対して効果を示す。

牛車腎気丸の臨床応用は腰・下肢に集中している。たとえば、坐骨神経痛や腰部脊柱管狭窄症、慢性腎炎、前立腺肥大症などである。いずれも腰や下肢に症状があらわれている病態に効果を示す。

近年よく用いられているのが、糖尿病性の末梢神経障害や腎症だ。ここで注意したいのが末梢神経障害のしびれに対してだ。前述した通り、牛膝を含むこの方剤は下肢にはよく効くが、上肢にはあまり効かない。上肢のしびれには桂枝加朮附湯などを考慮したい。

【投薬時の注意点】

共通する注意点:
① 地黄を含むので、胃腸虚弱や軟便・下痢などには慎重に。
食後投与を基本とする。

② 附子を含むので、動悸やのぼせ、舌のしびれ、悪心などに注意する。
また、手足のほてりやのぼせ、口や咽頭部の乾燥感のあるものには避ける。

No.107(牛車腎気丸):上肢のしびれや痛みにはあまり効かない。