二陳湯は去痰剤
“痰”の概念を理解する
そして、痰はどこで作られるのか?

去痰剤はイメージでとらえたほうがいい。

まず、痰とは何か? 漢方での「痰」とは、西洋医学でいうところのそれとは概念の広さが違う。ひとつは、気管支から出る「いわゆる痰」だ。もうひとつは、嘔吐物や動脈硬化の血管の中のドロドロといった「病理的産物」がそれにあたる。

次に、痰はどこで作られるのか? 水の代謝にかかわる臓器には、肺・脾・腎の3つがある。そして、痰は脾で作られ、肺にたまる。ゆえに、去痰剤の中には必ず、脾に効く生薬が含まれている。

【基本処方:二陳湯】

二陳湯はあまり使われていないイメージがあるが、去痰剤の基本処方だ。主薬は半夏と陳皮。この2つは古いものほどよく効く。そして「陳」には「古いもの」という意味がある。2つの古いものだから、二陳湯というわけだ。

 No.81(二陳湯):半夏陳皮、茯苓、甘草、生姜

適応:湿痰

主薬の半夏、陳皮には化痰(けたん=去痰)作用がある。そして、茯苓が脾の水をさばき、痰の生成を防ぐ。甘草は諸薬を調和し、半夏の毒性を除くために生姜(「半夏+生姜」の配合法則)がくわえらている。

咳、白い多量の痰、胸のつかえ、食欲不振、悪心・嘔吐などの湿痰の症状に適する。

【二陳湯の派生処方】

 No.37(半夏白朮天麻湯):半夏、陳皮、茯苓、生姜、天麻、白朮、黄耆、沢瀉、人参、黄柏、乾姜

 適応:脾気虚、風痰

 No.37はめまいでよく用いられる方剤だが、じつは去痰剤だ。二陳湯から甘草をのぞき、天麻以下をくわえた方剤(六君子湯の加減ともいえる)。

 適応は脾気虚と風痰。脾気虚はなんとなく想像がつくが風痰は想像しがたい。これもイメージでとらえる。イライラなど肝の症状がある人は「風」がおきやすい。脾でできた「痰」が「風」で上にあがると、めまいや頭痛がおこる。これを「風痰」という。

 主薬の半夏と天麻は、それぞれ去痰とめまいに効果があり、風痰によるめまいや頭痛の要薬となる。

 No.91(竹笳温胆湯):半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜、竹笳、枳実、柴胡、黄連、人参、麦門冬、桔梗、香附子

 適応:痰熱上擾(たんねつじょうじょう、余分な水と熱がたまった状態)

 No.91はカゼやインフルエンザ、肺炎などの後期、回復期に汎用される方剤。これもベースは二陳湯だ。それに清熱化痰の竹笳と理気の枳実をくわえると温胆湯になる。これにさらに柴胡以下(小柴胡湯の黄芩を黄連にかえたもの)をくわえると、竹笳温胆湯のできあがりだ。

 水が過剰にあると痰ができ、そこに熱があって上にあがるとイライラなどがでてくる。よってこの方剤は、咳、多痰、微熱がつづく、イライラして眠れないなどに効果がある。

【投薬時の注意点】

 No.81(二陳湯):手足のほてりやのぼせ、寝汗などの陰虚の症状には用いない。その症状がひどくなる。空咳や痰の切れない咳(肺陰虚)にも用いない(麦門冬湯を用いる)。

 No.37(半夏白朮天麻湯):高血圧からくるめまいや頭痛には不適(釣藤散が適)。虚弱タイプでは下痢や腹痛をおこすことがあるので注意する。

 No.91(竹笳温胆湯):血圧上昇やむくみがみられるときには中止する。